Baba Takashi 馬場 隆志

馬場隆志は備前焼に対する情熱と独自のアプローチで知られています。

学生時代は彫刻を専攻し、石から人物などを彫り 人体の美しさと石が持つ存在感や力強さに魅了されました。

現在、彼はろくろと板積み技法、あるいは手びねり技法の両方を使って器を形作っています。 

 

代表作の一つ、女性のシルエットをかたどった花瓶「torso」は、ドレスをたなびかせて優雅に踊る女性をイメージさせる流麗なデザインが特徴です。人の造形の美しさを想起させるトルソーに花を生けると顔となり、作品が完成します。

対照的に、「大地の器」は まるで自然の一部のようなざらざらとした質感が魅力です。土の持つ本来の力をいかに表現するか、その形を最大限に引き出し発揮させるかを考え、石の割れ目を利用して成形することで、石が何百万年もの歳月をかけて培ってきた粘り強さを土に宿らせた「土の器」です。

 

青窯変の発祥は、偶然ぐい呑みが炭火の中に落ち、青窯変が起きたことから始まりました。「この青に着目し、土の調整、窯詰め、焼成の工程を研究し、青を出すようにしました。12年かけて、ようやく鮮やかな色合いにたどり着きました。」

年に2回、1回あたり約1,000点の窯焼きをしていますが、青窯変が見られるのはごく一部。

馬場さんは 様々な表現を模索し続け、オレンジや金色が美しい長石釉の志野焼にも挑戦しています。

黒備前は、鉄分を多く含んだ泥を表面に塗り 江戸時代に行われていた「イベデ」技法を研究し、理想の色調を実現しました。黒く光沢のある仕上がりと、重厚な金属感が特徴です。

備前焼の技法、備前土、釉薬、薪窯が融合した窯の演出を通して、見たことのない新しい風景に出会ってみたいと願っています。今後は現代アートの世界にも響く作品作りを目指しています。

 

「窯焼きの試行錯誤を繰り返しながら、独自の技法を確立しました。斬新な形や色彩で備前焼の新たな表現を目指しています。世界に一つしかない、自分にしか作れない作品を残したい。それが人生をかけた挑戦です。」